オフィシャルレビュー
Rhodes Mark7

2009/12/19

人生をも変えた楽器「Rhodes」復活!

実は私、学生時代にはベースを弾いていました。で、出入りしていた楽器店でポロポロとキーボードを弾いていたところ、そこの名物店員(今やこの方は全国展開楽器チェーン店の社長!)の方に「氏家~!お前キーボードやれ!」と言われ、「まずこれを聞いてコピーしろ!」と渡されたレコードが、クルセイダーズのライブアルバム「SCRATCH(スクラッチ)」でした。

クルセイダーズ「SCRATCH」

さらに「あのレコードでジョー・サンプルが弾いているは、これだ!」と楽器店内に展示してあったのが「Rhodes markI」のステージ・ピアノでした。

もちろん「氏家~!お前はこれ買わなきゃダメっ!」と、言われるがままにローンを組んで購入していました(笑)
でも、これをスタートに私のキーボード人生がスタートし、ミュージシャン、アレンジャーとしてプロのキャリアをスタートし現在に至る訳です。

ということで、私にとって思い入れの深い「Rhodes」がMark7となって登場したのですから、このコーナーで紹介しないわけにはいきません!

では、スタート。

まずはRhodesの歴史とそのサウンドの魅力

ローズピアノの父、ハロルド・ローズ氏がフェンダー社のRhodesブランドとして1965年に発表したのが最初です。その後、ジョー・ザヴィヌル、マイルス・デイビス、チック・コリア、ハービー・ハンコック、ジョージ・デュークのような伝説的ジャズミュージシャン達がこぞってRhodesを使用し、そのサウンドは瞬く間にポピュラーになりました。

ビートルズの「Get Back」、スティービー・ワンダーの「You Are The Sunshine of My Life」、ビリー・ジョエルの「Just The Way You Are」は特に有名ですね。

ジェフ・ベックのアルバム「Blow by Blow」では全編、マックス・ミドルトンによるRhodesサウンドが炸裂しています。もちろん私の大好きなSteely Danは、どのアルバムでもRhodesが大フィーチャーされています。

ビートルズ「Let it be」。 ラストの「Get Back」ではビリー・プレストンの弾くRhodesによるゴキゲンなロックンロールピアノのソロが聞ける。

 

 

スティービー・ワンダー「Talking Book」。「You Are The Sunshine of My Life」のRhodesは絶品。

 



ビリー・ジョエル「The Stranger」。「Just The Way You Are」のフェイザーのかかったRhodesによるバッキングは、もはや定番。

 

 

スティーリー・ダン「Gaucho」。全曲でRhodesが大フィーチャー。彼らのサウンドには欠かせない音として現在でも定着している。

 

 

Rhodesは鍵盤部分だけのステージ・モデルとプリアンプ搭載の鍵盤部分/スピーカーで構成されるスーツケース・モデルの2種類に大別され、それぞれ73鍵/88鍵の2タイプがありました。

機種の遍歴を見てみると以下となります。

▼Rhodes創世期 1965年~

カラーリングがおしゃれ(?)なFender Rhodes Celesteシリーズ

レトロフューチャーなStudent Pianoシリーズ

▼Fender Rhodes Mark I初期 1969~1975年

フェンダーのロゴがついた希少バージョン

 

▼Rhodes Mark I後期 1975~1979年

フェンダーからRhodesブランドとなった。
私が所有していたのはこのモデルでした。

 

▼Rhodes Mark II  1979~1983年

パネルがシルバーから黒になり、重いキーボードを載せても大丈夫なように、トップカバーの形状が改良された。

 

▼Rhodes Mark III EK-10 1983年

イコライザーに加え、簡易シンセサイザー機能を搭載した希少モデル

 

▼Dyno-My-Piano 1974~1983年頃

Rhodesのハンマーアタック感をより強調した調整やEQやエフェクターを内蔵し、個人や他社による改造版Rhodesも出回った。Dyno-My-Pianoは、その代表格。




▼Rhodes Mark IV 1983年

ブランド売却や買収などのごたごたや新機構アクションによる開発遅延などが原因で、結局、世には出なかった幻のモデル

 

▼Rhodes Mark V 1984年

より頑丈な外装が特長


MIDI付プリアンプ内蔵モデルもあった。

 

▼Rhodes MK-80 1990年

RhodesブランドがRolandに移って発売された電子音源方式の事実上Mark 6

何といってもRhodesサウンドの魅力は、実際にトーンバーという金属の棒をハンマーで叩き、その振動をピックアップで増幅することで得られる、アタックの金属音とふくよかで暖かみのある持続音につきます。

Rhodesの発音機構の断面図(Mark 6)

パーツの特徴
音色調整やチューニングが可能なトーンバー
ABS樹脂による外装
木製鍵盤
バランス・ピン
アクションレール
ハンマー
ピックアップ

また、スピーカー付のスーツケース・モデルに搭載されたプリアンプによるバス/トレブルの音色コントロールやステレオで左右に揺れるトレモロも絶品でした。

 

Mark7でRhodesはどう進化したか?

まずは外観。見てください、この流線型ボディ!まるでイタリア車のような美しさです。

トップカバーが車のボンネットのように優雅に開きます。もちろん発音機構は、オリジナルRhodesそのままのトーンバー打弦方式です。

以前のバージョンよりもシャーシ、ハンマー機構、トーンバーの材質がかなり強化されており、調整やメンテナンスも万全でしょう。(以前のバージョンはハンマーやトーンバーが折れやすく、シャーシもかなり弱くて移動のたびにひやひやしたものです)



今回紹介するのはプリアンプ内蔵のアクティブ回路搭載モデルですが、このプリアンプの出来が素晴らしい。

以前のスーツケース型のプリアンプとは雲泥の差です。それも当然で以前はベースアンプのようなスピーカーを鳴らすために調整されたプリアンプでしたが、Mark7のプリアンプは、現代のハイファイ・モニタースピーカー環境を想定した調整が施されています。

メイン・ボリュームはもちろん、イコライザーはロー(低音域)、ミッド(中音域)、ミッド・フレキュエンシー(中音域の周波数)、ハイ(高音域)が搭載されており、その音作りの幅は70年代のコロコロしたサウンドから90年代後期のハンマーアタックによる金属音をカリンカリンに仕上げたサウンドまで、Rhodesで出せるすべてのサウンド・キャラクターをカバーできる性能を持っています。

もちろんスピード、深さのコントロールが可能なステレオ・トレモロも健在です。トレモロは以前の矩形波的変化から、正弦波と矩形波の中間のような緩やかな変化となっています。

 

左サイドに出力端子、ヘッドフォン端子、インサーション端子がありますが、コーラスやフェイザーとの相性はホント抜群です。

 

やはり本物はぜんぜん違う

久々にRhodesを思いっきり弾き倒しましたが、やはりRhodesを前にすると「よーし!」と構えるので、弾くフレーズやタッチによるダイナミクスを十二分に生かした演奏スタイルになってしまいます。やはりこれは本物の楽器だからなんですね。

皆さんがよく電子ピアノやシンセサイザーのプリセットで耳にする「エレクトリック・ピアノ1」の音色は、このRhodesをサンプリングした音です。ただどうしてもタッチ感はグランドピアノの音色にベストマッチングするように鍵盤機構ができているので、Rhodes独特のタッチ感による音色の振る舞いの再現には自ずと限界があります。

ぜひ、本物の楽器の振る舞いを体験していただきたい!

弱く弾いた時の繊細な響き、思いっきり強く弾いた時のトーンバーがしなる音や強烈な金属音のダイナミクスに、目からウロコ状態になること請け合いです。近くにRhodesを試奏できる楽器店がない方は、ぜひムービーを見て、いかに私が気持ちよさそうに弾いているかをご覧ください(笑)!

 

新しいRhodesのラインナップ

Rhodes Mark7には、61/73/88 keyの3種類の鍵盤、ボリュームとトーンのみのスタンダード、プリアンプ付きのアクティブ、MIDI機能付きのアクティブの3タイプ、外装仕上げは赤、白、黒の3色で艶あり、艶消しのバリエーションがあります。もちろん専用スピーカーも用意されています。

スタンダード・タイプ

MIDIコントローラー部分

MIDI機能付きモデルには、鍵盤の右サイドにピッチベンド、モジュレーションのホイールがあります。

オプションのスピーカー・システム(赤、白、黒の3色あり)

 

Rhodes Mark7、まさしくホンモノのエレクトロニック・ピアノです!!!

私が気持ちよくRhodes Mark7を弾きまくっているムービーをご覧ください!

 

■オフィシャルレビューHD版について

ミュージックトラックのオフィシャルレビューHD版では、映像はPanasonicのLumixのGH1を使用してハイビジョン映像を記録し、音声はマルチトラックでZOOMのR16を使用してデジタルレコーディングを行い、それぞれの素材をもとに映像編集しています。

 

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著者紹介

氏家 克典

学生時代よりEAST&WESTや世界歌謡祭など数々のコンテストに出場。 作編曲、自己のグループ、スタジオミュージシャンなど本格的プロ活動をスタート。 音楽コンサルティング、音楽ソフトウエア企画制作、音楽学校運営、作編曲、プロデュース、国内/海外デモンストレーション、研修、後進育成、連載執筆など、その活動は多岐に渡っている。 特にデジタル楽器関連の分野では、その軽妙で豊かな経験に基く語り口と、独自の視点によるハイクオリティで斬新なプロデュース作品が、常に業界の注目を浴びている。 また、いままで手掛けたTVCM音楽/楽器内蔵デモ曲は数百曲、デモ演奏/研修で訪れた国々は15ヶ国以上に及ぶ。 日本シンセサイザープログラマー協会(JSPA)副理事長

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